病院において研修医が中心である意義

初期研修医を受け入れている病院のほとんどが『研修医が主役』的な位置付けをしていると思うのですが、どうなのでしょうか?

人に教えてこそ知識が定着する

一般には『人に説明することが可能ならばその知識は本物』というような教えがあります。医学の世界でもよく聞く言葉です。病院が初期研修医を受け入れる理由のひとつに指導医側の知識や手技の研鑽が挙げられるでしょう。

初期研修医がいない病院ではあまり人に教えることはないと思うので、どうしても固定的な仕事のスタイルになってしまいそうです。

しかし、こうは言われていますが、自分は病院が初期研修医を受け入れるのはこういった理由ではないと思っています。

病院の雑用係としての初期研修医

『雑用係』と言ってしまうとマイナスイメージですが、自分はそう思いません。医者としての仕事を行っていく上で、採血や物資の運搬、各種検査や手技の準備、手術をするまでの諸準備などは避けては通れない雑用です。

逆にこれらの雑用は一回覚えてしまえば誰でもできる(究極的には医者でなくとも)ので、専門医や指導医クラスの医師がやるのは彼らの時間単価を考えればもったいないです。雑用は1,000万円以上の医師でなく、300〜600万円クラスの研修医で十分です。

また、夜間の救急外来の多くは初期研修医でも対応のできる症例です。交通外傷などの重いものは上級医が対応すれば良いのです。夜間は時間単価が通常よりも高くなるので、ここでも初期研修医を使ってコストを抑えることは病院経営にとって非常に大事なことになります。

究極的にはすべての患者さんを初期研修医で対応して、上級医は状況報告を受けて治療方針の最終決定をする・・・という形をつくればより少ない上級医の数で病院を回せるので効率的な病院経営ができます。違った角度からみると、上級医は難しい症例のみをみれば良いサイクルをつくれます。

研修医からみたこの状況

安くこき使われているイメージの初期研修医ですが、これはこれでメリットがあります。医療はとどのつまり”経験”が最重要ファクターになりますので、こき使われれば使われるほど、その人の医療力はアップします。給料が低いのは嫌ですが、2年間だけと思ってドップリ研修医生活を医療に捧げれば、その後の医者としての能力はかなり高くなると言えるでしょう。

ひと昔前は初期研修医に給料は払われてなかったわけですから、その時期に比べれば相当に状況は良くなっていることになります。