本当に”女子”医学生なのか!?”
ネットでちょっと話題となった表題のはてなダイアリー「女子医学生だけど女は医者なんかを目指すな」を読んでみて、納得するところがありましたが、ある疑問が浮かび上がりました。それは、
「筆者って医学生じゃなくて臨床医しているドクターじゃない!?」という疑問です。
全体通して言えることなんですけど、医学部6年間、特に5年生6年生の病院実習での体験をもとに書いていると思うんですが、トンデモ患者って実習しててもそうそう会わないです。大学の地域によって、大学によっても患者層は異なるとは思いますが、そこまで変わるとは思えません。
細部を検証してみる
ちょっと性格悪いかもしれませんが少しずつ内容を検証してみましょう。
”大した用でもないのに救急車使ってご来院なさったり・・・”
→大学病院にはまず大した用でもない人ってこれないと思います。基本的には高度救急救命が使命ですから、やばそうな患者しかきません。とはいえ、全く来ないかと言われればそうでもなく場合によってはくるかもしれませんが、来たところで大学の救急科は総じて暇なので「女は医者になるな」というほどのイベントではないと思います。大学病院外の市中病院の救急科は忙しいところは忙しいですし、大したこともない人はたくさんくるかもしれませんが・・・忙しい救急科の市中病院なんてそんなに多くないです。それに救急科にならなきゃいいと思います。
”外来で待たされたってブチ切れてきたり”
→これもありそうでないです。もちろん、長年外来をやっているドクターならあると思います。しかし、学生が同席する外来でブチ切れる患者はそうそう会うことはできません。そもそも、学生で外来に同席するのは思っているほど多くなくて(これは大学にもよるでしょうが・・・)、大学病院の外来でブチ切れる患者なんて少ないですし、市中病院で外来同席することも多くないです。2年間の病院実習でひとりふたり外来でブチ切れる患者がいるくらいで医者になることをススメないなんてなんかおかしいです。一般企業だったら毎日キレる顧客を相手にしなければならないでしょうし・・・。
”スピ系に走ってわけわかんない水だの信じて治んない段階まで癌放置した後病院来て「何もしてくれない!」とか言うやついるし”
→これは本当にこういう人と病院実習で出会ったのか疑う記述です。こういう患者はいるのでしょう、しかし、がん患者の新患外来に学生同席させること・・・あるかな。
”妊娠してません!絶対してません!とか言うけど妊娠検査したら陽性で親の手前言えなかったとか”
→こんな状況の患者に学生同席させるのかな・・・と思います。
”そらわかってるよ本当に大変な人がいるって言うのは。こっちだって本当に大変な人救うためにここまで勉強してるんだよ。その人たちに言ってるわけじゃない。それは当たり前。病気になるのは誰のせいでもないから。でもその前に超大量の超どうしようもない人がいるわけ。そっちをさばくのにめちゃめちゃ時間かけてるわけ”
→超大量の超どうしようもない患者ってそんなにいないと思います。一定数は確かにいる。んでもって、学生の実習じゃ、患者とそこまで関わることもないですし、どうしようもない患者にめちゃめちゃ時間かけているドクターをみたことがありません・・・。
”ヤブ医者はそりゃ居ないとは言わないけどさ、大概の医者が真面目に働いてるよ、先生たちみんないい人だよ、でも疲れてる。本当に本当に疲れてる”
→大概の医者は真面目に働いています。良い先生も多いです。でも、疲れているドクターは地方にはあまりいません。医局員が少ない科とか脳外科とかは疲れているドクター多いかもしれません。大学病院なんて下手すると学生を置き去りにして17時ピタで帰宅する先生もいるくらいです。
”認知症の人間を拘束するな!っていうけどじゃあ点滴自己抜管したり転倒して後遺症残ったり、認知症の他の患者に殴られたり夜中に勝手に出て行って道端で死んだとしても納得しますっていう同意書全員に取らなきゃそんなもん無理だわ”
→これは現場の声としてはそうなんでしょうけど、学生レベルでこういう風に感じるのは非常にマレだと思います。認知症の患者を実習でみるケースは少ないですし、同意書とかそういう実務レベルの話に学生が関与することは無いと言って過言ではないと思います。せん妄の患者ですらほぼ見たことありません。
”国からは無意味な検査をするな、医療資源の適切な分配をと圧をかけられ、患者からはきちんと検査してくれないと圧をかけられ、あちらを立てればこちらが立たず”
→適正な検査とか医療資源の適切配分とかは大事な問題だと思いますが、学生にはほぼ関係のない話です。国からのお達し文書を学生に講義するドクターがいればわからなくもないですが・・・。
”医学の進歩が早過ぎて医者だって常に勉強し続けなきゃならない状態で「治療方針は患者さんと一緒に決めましょう。患者さんの人生です。」って悪いけど医学知識全くない赤ちゃんレベルの人間と一緒に決めるとか出来るわけないだろ何言ってんの?”
→確かに患者は赤ちゃんレベルかもしれませんが、医学生なんて所詮”幼稚園児レベル”。ちょっと医学を知ってますくらいなので、これは医学生が発言していいレベルではないと思います。ただ医学のテストを合格する知識があるってだけが医学生。
”提示された治療がネットで調べたやつより少なかった、自分の人生なのに医者に決められたっていうなら医者になったらよかったのでは?とまでは言わないけど医学の本読んだり論文読めばいいのに”
→医学生で医学論文まともに読んだことある人何人いる?そりゃ授業なりで必要なら読むけど、何か疑問に思って論文読んだ経験ある医学生5%もいないよ・・・それが現実、だから一般患者に論文読めなんて普通学生なら思わない。
”リンパ球性下垂体炎にでもなったら当分復職厳しいだろうに年収300万の男と赤ちゃん抱えてどうやって生活するんだよ。てかまず切迫なって突然3ヶ月入院とかなったらまともな復職できねーよ!医局居づらいよ!”
→復職だとか医局いづらいとか学生レベルではわかりません。そういう話を大学病院の医局に属するドクターに聞いた・・・というなら話はわかりますが、これは確実に自分の感想を述べた記述ですね。
”ただ女医だけ増やしても今いる現場の男の医者は負担増え過ぎて死ぬし、その風当たりで女医も全然偉くならないままで終わるやんけ!それなら勤務シフト制にする?担当医制じゃ無理だろうね。外来どーすんねん”
→ここらへんは学生レベルでは計りし得ない情報です。シフト制とか担当医とかで外来どーすんねん?ってのを理解できる学生はほぼ0%です。担当医制で外来回せないの??
結論
この「女子医学生だけど女は医者なんか目指すな」の著者は医学生ではないと思います。たぶん、研修医か大学病院の医局に入局している若手の専攻医だと思います。
記述している内容の真偽は自分にはわかりかねますが、本当のことも多いかもしれません。しかし、学生ではないです。たぶん、女子ではなく男子のような気もします。
なんで、リアルドクターが医学生のふりをしたのかはわかりませんが・・・。