デフレ化する医師免許

医師免許+αを求められる社会になるかもしれない・・・。

医師免許の価値は下がっている?

色々と実習を進める中で医師免許は昔(例えば50年くらい前)と比べて価値が下がっていると感じます。

もちろん下がっているとはいえ、その価値はまだまだ高いものであることには変わりません。

手術場を例にとって考えてみます。現代の手術というものは、先進的な医療機器を使って進められていることがほとんどです。わかりやすい例で言えば心臓外科の心臓の変わりをするポンプとか整形外科や耳鼻科領域で使われるナビゲーションシステム、血管内治療で使われるカテーテルなどがあります。

これらの機器について執刀医側の知識も高いですが、完全に精通しているわけではありません。術場には医療機器の担当者が常にいて、どの商品を使うべきか?を執刀医が聞く場面も多々あります。この担当者がいないと手術ができないことはあまり無いと思いますが、何か機械のトラブルがあったら医療者側だけでは到底解決できません。簡単にいえば、電子メスの機械の調子が悪くて担当者がいなかったら手術は中止となるでしょう。

薬に一番詳しいのは医者?

治療といえば手術に加えて『クスリ』というイメージも強いと思います。内科的疾患に対しては主に薬剤で治療することになります。このクスリですが商品全般に詳しいのは製薬会社のMRです。薬剤師も詳しいですが、治療機序などの薬物動態関係だと思います。恐らく、医者はこれらの2職種に比べたら詳しくありません。もちろん、専門とする疾患に対する薬剤については同等に詳しいかもしれませんが、そこまで知っている医師はそんなに多くはない印象です。MRと薬剤師はクスリが業務範囲であり、医師はクスリだけでないので知識が劣るといっても当然といえば当然です。

医師の医療に占める活躍度

昔は電気メスもなかった訳ですし、クスリもそれほどあったわけではありません。金属製のメスを使い手術をしていました。麻酔機もなかった時代は看護師が手動のエアバッグでポンプしていた・・・と聞いたことがあります(確かではない)。

いまはリハビリスタッフも充実していますが、かつてはリハビリスタッフも少なく、また言語聴覚士などのスタッフも少なかったためこれらの領域も医師が中心にカバーしていたと推測します。

医療の機器や業務が成熟し、細分化されていくとともにそれを担当する職種ができていき、医師がカバーする領域は年々少なくなっていっています。もちろん、処方だったり指示するのは医師であり、まったく関与しない訳ではないですが・・・。

医師の医師たる所以

こういう状況を憂いているわけではありません。医療の成熟による当然の結果であります。ですが、こうなっていくと、医師の医師たる所以、医師の業務で他の職種に代替することができない固有の業務が医師の価値を決めてくるのではないか?と感じます。

これについては自分は『病歴聴取と身体診察、簡易な血液検査・尿検査により鑑別診断を挙げて診断する能力』だと思います。

上記に述べた医師との超基本的な能力は他の職種では代替するのが難しいです。素晴らしい臨床医の外来診察に長年担当してきたベテラン看護師であれば可能性はあるかもしれませんが・・・。

恐らく、これからの医師は原点に立ち戻って『病歴聴取と身体診察、簡易な血液検査・尿検査により鑑別診断を挙げて診断する能力』がある者が実力をもつ世界になるかもしれません。