地方国立大学医学部の教授に言いたいこと

実習で各科を回っていると必ずといっていいほど聞かれるのが『志望科は?地元戻るの?』である。

地方医学部の悩み

地方医学部の一番の悩みは『学生が卒業後に残らないこと』である。学生が卒後に地元に戻ってしまうと各診療科への入局が少なくなってしまう。地域に縛られる地域枠やAO入試等があるので一定数は確保できるが、それでも地方だと医者の数は足りない。しかも、教授陣は地域枠やAO入試組の縛りが解けても、他県への流出はないとタカをくくっているところもあるので危機感がないと言っていいだろう。医師の世界では一度医局(自大学)に入局したら他の医局(他大学)へ移動することはかなり難しいのは確かだが、医局に属さないで医師として生きていける道もかなり広がっているので、10年後くらいから地方から都会への医師の移動が急激に増えてもおかしくはない。

学生が地元に帰る理由

都会等から地方医学部に来て、卒後に地元に帰るのは人それぞれ理由があるが、共通して言えることは『自大学が魅力的でないから』である。将来研究者になる人以外は大学での初期研修はほぼ意味がない。後期研修にしたって症例が多いくらいしかメリットはない。というか東京のど真ん中にでも行かない限り、症例の奪い合いなんて起こらないと思います。都会・田舎、大病院・中小病院を含む20以上の病院見学を行いましたが、症例の奪い合いが起こっている病院は0でした。患者さんはどこでも十分にいると思います。

さて、大学病院で各診療科を回っていると必ず聞かれる質問が『出身どこ?卒後は地元帰るの?』です。

はっきり言って学生はこの質問がくると本当に面倒で嫌な気持ちになります。『地元に帰ります』と言うと不機嫌になったり、不機嫌にならないまでも『地元の大学の医局に入ってもドサ回りさせられるだけ。母校でいっぱい先輩いる中で仕事した方が何かとやりやすいよ!』とリクルートしてきます。それはそれで間違ってはないのでしょうが、母校に残っても母校所在地よりも過疎地の病院を回らなければなりませんし、そもそも、母校所在地がかなり地方の過疎地です。地方の大学病院で長く働いていると感覚が鈍るのでしょうか?大学病院が中心となってしまって広い視野がもてていないように感じます。それに、地元の大学の医局に入って苦労するのは折り込み済みです。地元に帰ってする苦労よりも母校に残るメリットが下回っているのです。そこに気づいていない大学教官(特に教授)が多いような気がします。

地方大学病院はどうするべきか?

これは極めて簡単なことです。

現状の実習システムを時代に合わせて変化させていくだけです。いま現在の実習システムは旧態依然とした教官本位の実習となっています。これを『学生本位の実習』に変えるだけです。

『学生本位の実習』とは単に学生の言っていること聞くことだけではありません。そうすると、楽な実習になるだけです。学生がどうやったら臨床に興味をもつか?を徹底的にリサーチしてそれを実習カリキュラムに盛り込むだけです。

自分も機会があれば教授に改善の提案をしましたが、取り入れてくれる人もいれば不機嫌になる人もいました。