医療業界は絶妙なバランスが重要

前回は大津市市民病院の救急科の医師が大量離脱した記事を書きました。

市立大津市民病院救急医の一斉退職

医療や医師という人間はかなり絶妙なバランスの上で成り立っているようなきがしてなりません。

文部科学省と厚生労働省

医学部を管轄しているのは文部科学省です。一方、医師を含む医療行政は厚生労働省が管轄しています。

何度もブログで出てきたように日本の要所の病院人事は大学病院の医局が握っています。

大学病院というものは通常『医学部付属病院』です。

ですから、管轄が文部科学省なのか厚生労働省なのかはっきりしません。こういうことが生じると、省庁のパワーバランスで仕事が割り振られます。

恐らく、文部科学省よりも厚生労働省の方が権力が強いので文部科学省は主張があっても通らない状態だと思います。

医学部というものは実質専門学校でありますし、医学部から大学病院へシームレスに勤務する人も多い中、管轄官庁がふたつあるのは頂けないと思います。

厚生労働省への一本化が良いと思いますが、どうも厚労省の医療業界改革は現実にそわないような気がします。

微妙なバランス

医師の人間関係は微妙なバランスによって成り立っています。

せまい社会なので本気で喧嘩することができない社会です。現実には本気で喧嘩してしまうこともあると思えますが、それは本当にどうしようもないケースのみです。

基本的には喧嘩になる前にどちらかが折れるか、そもそもそういう人と付き合わないかになります。

自分が某病院のとある科を見学に行った時の話です。

その科は労働環境も良く、在籍している医師たちも非常に仲良く、雰囲気が良いと感じました。

そこであるひとりの若手医師に『すごい雰囲気の良い科で良いっすね!』と話したところ、

ちょっと寂しい顔をして『まあ、表向きはね・・・』という答えが帰ってきました。

見学の学生が来ているときはいつもよりも2割増しで表向きを良くしているのかもしれません。

もう少し突っ込んで聞いてみたら『やはり、それぞれ好き嫌いがあるから・・・』と。

確かにどこの職場でもそんなもんなんでしょう。でも医師の生態を少しでも知っている自分は『微妙なバランスでこの良さげな雰囲気を保っているんだな』と感じました。

医療業界は封建的?

『医療業界は封建的』というのはどこかで聞いたことのあるフレーズです。

自分もその通りだと思います。

しかし、医療は全国的な大規模システムであり、絶妙なバランスのもと成り立っています。

なにかひとつシステムを変更するとそれに付随して多くのことを点検・見直しをしていかなければなりません。

また、全国的なシステムですが、地域性も鑑みなければなりません。東京のど真ん中と限界集落では同じように考えるのは愚かです。

そして、医療や病院を支えるシステムを支えているのは誰でしょうか?

全国的なものは厚労省や各自治体だと思います。これらはいったんおいときます。

各病院のシステムは『医療情報システム部』的なところが担当しています。

しかし、大学病院クラスならまだしも、中規模クラス以下の病院ではシステム部に期待するのは無意味でしょう。

世の中には多くの国公立の病院がありますが、優良なシステム人材が流入する訳もなく、電子カルテ化が精一杯なところでしょう。

なので、必然的に病院組織は旧態依然とし、封建的とも言われるのだと思います。

一度壊れると戻らない

医療界隈では一度壊れたシステムを復旧させるのは至難の技です。

例えば冒頭でも述べた大津市民病院の救急科をまた元の陣容に戻すのはかなり難しい作業です。

以前の記事でも記載しましたが『医療はマンパワーで決まる。』と記載しました。

要は、医師の人数の多いところに医師などのマンパワーが集まるのです。

なぜなら、マンパワーが無ければマンパワーを増やす前にその科が崩壊してしまうからです。

人がいなければ、いる人だけで仕事を回さなければなりません。それこそ人が増えるまで休みゼロな状況です。

それに風評被害もあります。いったん問題が起こってしまった病院や科にはよっぽどのことが無い限り、そこで働きたいとは医師は思いません。

こういった理由から医療システムは『一度壊れたものは戻らない』と思うのです。