この世界は四次元である。
ここでは、縦、横、奥行き、時間を四次元ということにする。
医学的知識は四次元的であると思うので述べていきたいと思う。
医学的一次元知識
医学的一次元知識は固有名詞である。医学に限らず科学というものは物質や現象の名詞化、定義付けが基本である。固有名詞がないと議論すらできない。
医学的知識は解剖を主とする。解剖とは人体の構造である。血管、骨、神経、臓器などがどこに位置して、どのような血管や神経によって支配されているかを考える学問のひとつである。
解剖の知識が無いと医師同士でも患者さんとも話ができない。なので最重要知識となる。
解剖以外では物質名が重要だろう。アミラーゼやアミロイドなどの酵素や分泌物の物質名も重要であるし、鉄、マグネシウム、などの無機物質、有機物質の名称も重要である。
一般に薬というものはこれらの有機、無機物質の集合体であるので、これらの名称を知らないというのでは医師はつとまらない。
医学的二次元知識
医学的二次元知識は平面での解剖的知識である。解剖というものは立体構造である。ただ、この段階では平面で書かれたものとする。
医学部では2年生か3年生の時に人体解剖実習を行う。ここでは献体された遺体を使わせて頂き、実際の解剖を勉強させて頂く。
遺体はホルマリンなどで固定されている。固定とはタンパク質や脂肪成分から水分を抜いて硬化させるというイメージである。
固定を行わないと遺体は腐敗していく。実習は半年程度の期間で行うため固定という処理が必要となっていく。
ただし、固定を行うとリアルな人体構造からはかなり異なった構造となる。外科手術の見学等で見れる腹部内臓等と比べるとかなり状況は異なる。
しかし、現状、固定しない人体を解剖実習で行うことは日本では厳しいので今の方法がとられている。
なので、医学部生時代に三次元的知識は学ぶがそれは2.5次的なレベルにとどまる。
さて、二次元的解剖知識で重要なのは各種臓器の平面的位置関係である。肺、心臓、肝臓などの主だった臓器の位置関係であれば、医療関係者でなくても一般常識として知っている人も多い。
しかし、血管・神経走行や分岐というのは医療者、特に医師でないと詳しくない。実際の手術、診断などでもこの走行・分岐というのがキモとなってくるので二次的な解剖知識が重要となる。
医学的三次元知識
医学的三次元知識は三次元的な解剖の知識、および酵素などの物質の相互作用である。
二次元的な解剖の知識が進むと今度は三次元的な知識が重要となってくる。人体のどの深さになにがあるかを考えなければならない。
例えば肥満の人であればかなり脂肪が厚いので皮膚から何センチ深いところに臓器があるのかわからない。逆に痩せているひとならその浅いところにある。
この奥行きについては二次元的な資料(教科書、CT、レントゲン)などでは把握するのは難しい。実際に臨床で感覚を積むことでしか学べない。
医学的四次元知識
最後に医学的四次元知識である。これは患者さんの家族歴や性格や遺伝子変異などといった患者さんの内面や個性の領域である。
こればっかりは教科書では学べない。ひとの数だけ個性があるからだ。
医学生はこれを病院実習で学ぶ。教授の総回診などを側でみて患者さんとのやりとりや問診テクニックを学ぶ。
実臨床ではこの四次元的知識が一番重要だったりする。結局、患者さんから信頼されていないと重要な情報が引き出せないからだ。患者さんは病気を治したいから医師には絶対的に協力的になる・・・というのは間違いで、信頼されていない医師には本当のことを話さない。
日本の医学部の実習期間は2年がスタンダードである。しかし、アメリカの基準に合わせるために2年以上になるように順次実習期間を伸ばしている医学部が多い。