医療業界と介護業界は似ていて、非常に重い問題を抱えていると思います。

とある特別養護老人ホームを見学したとき

数年前ですが特別養護老人ホームに見学に行きました。そこはかなり重度の認知症を患っている老人と活動量や意識レベルの低い老人が入居者として多い施設でした。

半分くらいはベッドから自分で起き上がれない人と残りの半分は自分でベッドから起き上がれるけれど、食事や排泄は介助者の手を必要とする人でした。

施設のスタッフは女性を中心として、20代から40代の人が多かったです。男性も若干名ではありましたがいました。スタッフの主な仕事は食事介助、入浴介助、排泄介助でした。僕が見学したときにじっくり見ることができたのは食事介助でした。実際に入居者に食事介助を行いました。

食事介助中に見てしまった闇

基本的に食事は入居者全員が一斉に摂ります。自分で食べれる人は自分で食べてもらい、介助が必要な人はスタッフが順番に行っていきます。

食事介助中にひとり気になるスタッフがいました。

20代後半くらいの男性です。どこらへんが気になったかというと、食事介助中のスプーンの使い方です。その男性スタッフはスプーンで食事をすくって”ガコッ”という音がなるくらいに入居者の口にスプーンを突っ込みます。言葉で伝えるのはなかなか難しいのですが、心の中で『早く食べろやゴラッ!』みたいなことを言ってそうな雰囲気です。そういう食べさせ方なので入居者も非常に食べずらそうで、時に咳き込むこともありました。

チーフスタッフにそれがきちんとした方法なのか聞きたかったのですが、若かった自分はそれができませんでした。

老人ホームの雰囲気

老人ホームの雰囲気は非常に悪いです。ベッドから出れないような状態の老人や認知症が進んだ老人が何十人も集まっている状態に20代や30代のこれからの若者がいるのは相当辛いです。それが仕事だとしてもです。しかも、介護業界は給料もかなり低く、希望が持てないのも辛さを加速していると思います。

もちろん暴行などの犯罪は許されないことだとは思いますが、冒頭の事件もこの介護業界が有する特有の未来に対する”絶望感”がその犯罪の発生を加速させているような気がします。

一時期と比べれば介護士の給料も上がっていると聞きますが、前向きに頑張れるぼどの給料にはなっていないのではないでしょうか?

介護施設関係での暴力事件がある度に、あの時、見学にいった施設でみた男性スタッフの表情とスプーンが思い出されます。将来、病院を開業し、利益を出してその利益を(自分で設立した)社会福祉法人に還元し、介護士の待遇改善に貢献するのも意義のあることだと思います。