三重大学医学部の新型コロナクラスター発生を考える

三重大学医学部で初となる本格的な新型コロナウイルス感染のクラスターが発生しました。

三重大学医学部のクラスター発生

新型コロナウイルスが発生以来、医療者は奮闘しており、各種メディアでは『医療者に心無い発言や対応する事象』が生じているのは嘆かわしいことだと思います。
今回、三重大学の医学部で本格的なクラスターが発生してしまいましたが、この件について、学生が大学の行動指針に従い、個人防御を徹底していたならば責められる理由はないと思いますが、そうでないならばメディアや国民からの追及は厳しくなると思われます。実態はどうであったかは今後明らかになるのかもしれません。

医学部でクラスターが発生するということ

医学部でクラスターが発生してしまうことは非医療者が考えている以上にウイルスの蔓延リスクがあると思います。恐らく、医療者でさえ軽く見積もっている可能性もあります。事実、当該医学部生たちをメディアからのバッシングから守るために情報開示に反対しようとしている人々もそれなりの人数います。確かに、必要以上に責められるべきではないと考えますが、情報をシャットダウンしてしまうと、市民県民は暴こうとしますし、それがエスカレートすれば必要以上の攻撃が想定されます。また、情報非開示により医学部間での情報共有も貧となり、医学部におけるクラスター発生防止にもマイナス影響です。恐らく、全国の医学部長や病院長はこの件に注目しており、これを自組織にも発展的に組み入れようとしているでしょう。そうでなければ、万が一、自分たちの医学部でクラスターが発生した時に『三重大学の件で学んでいないのか?』と言われてしまいます。自分でもそう思います。

さて、医学部にクラスターが起きるとどういうことが起こるでしょうか?

まずは学生間で蔓延が生じます。今回の事例はクラスター発生後、わりとすぐに夏休みがはじまったため蔓延は最小限になっていると思います。しかし、これが長期休暇以外の時期であればあっというまに蔓延します。三重大学医学部がどいういう運営で授業や部活動を行なっているのがわからないのでなんとも言えませんが、医学部というところは閉鎖的なコミュニティであり、大学内、部活動などで学年問わず密に触れ合うので蔓延は不可避だと思います。自分の大学で考えてみると、図書館、PCルーム、学食、部活動が接触可能性が大きい要素です。自分は実習中であるのでマスクを常に装着していますが、1~4年生や実習をしていない5~6年生はノーマスクが主流です。

医学部は閉鎖的なコミュニティと話しました。多くの医学部は医学科と看護学科や保健学科を併設しています。いずれの学科も病院実習があります。病院実習は自分たちの大学病院だけに限らず、近隣の基幹病院にも実習に行きます。三重大学医学部の状況はよくわかりませんが、県内の基幹病院の多くに実習生を派遣していると思われます。これも夏休みの時期に重なっていたため、基幹病院への波及は限定的と考えられます。

さらに、医学部のコミュニティにいる者、特に医学科の学生の多くは医学科同士、医学科と看護学科と付き合うことが多いです。学生同士だけでなく、学生ー研修医で付き合うことも稀ではありません。であるから、医学部内での蔓延は早くなりがちですし、下手をすると感染学生が少し離れた基幹病院の付き合っている研修医と会って感染・・・ということも考えられます。

夏休みで感染の広がりが限定的になったのは良いのですが、夏休みは夏休みで医学部の学生には『病院見学』『マッチング面接』などがあり、各々が全国各地の自分が勤めたい病院へ行きます。自分もこの夏に流行地域含め多くの病院を訪れる予定です。もし自分が知らずに感染してしまったと考えると恐ろしい限りです。

以上のように医学部でクラスターが生じることと、繁華街のバーやキャバクラでクラスターが起こるのでは、問題の質が異なるのは明らかと言っていいかもしれません。

感染経路や詳細や真相の解明を

現在は三重県の発表により感染経路等の全体像はわかっています。しかし、感染学生たちの細かな状況は明らかになっていません。

学生たちのプライバシーには十分配慮する必要はありますが、どこでどのように感染してしまいどうやって感染が広がったのか?を解明することは大事だと思います。

『政府がGo to キャンペーンに舵を切ったのだから、ルールに乗っ取った旅行で感染しても責められるべきではない。』というのはその通りなのですが、政府が感染を許容している訳ではないです。いまは新しい生活様式というまだルールの定まっていない時代に突入しようとしています。例えば、『医学部の学生は例え流行地域に行ってないとしても県外に出て帰って来るときは2週間自宅待機』のような少し厳しめの行動規制が必要かもしれません。

今回クラスターとなってしまった学生たちが責められるべきであるか否かは良くわかりませんが、今回の事態の解明が今後の全国の医学部運営にもプラスに働くと思われるので全容の解明を期待します。