無給大学院生問題について考える

医師の働き方改革の一連の流れでまた新しくニュースが出てきました。医学部にいると『これが当たり前なのかなぁ・・・』なんて思っていましたが如何に。

医学研究科の大学院生

無給大学院生

医学部で勉強していると大学院生がたまに出てきます。大学院生といっても医学部を出て医師免許をもった人たちです。

医師は研修医が終わると専攻科を決めるとともに専門医を目指しつつ、自分のタイミングで学位を取ります。

医学部の場合、博士課程で医学博士になることを『学位』を取る、といいます。

全員必須の資格ではないのですが、医学博士をもっていないと出世に響くらしいです。おそらく、同じくらいの業績とかだと医学博士持ってない方は不利とかそういう感じであると思います。

まあ、そもそも出世したいと思う人なら学位をとるのは当たり前な世界だと思うので、大学病院に残っている人で取ってない人なんているのでしょうか?という感じ。

一方、開業医とか市中病院とかで活躍するひとにとってはあまり意味のないものかもしれません。実力勝負だと思います。

さて、この医学部で出現する大学院生の話です。

大学院生ですから本来は学生です。

なので本分は研究にあります。

しかし、ずーっと研究している訳ではないので所属する医局で普通に働いています。

ただ、あくまで自分の研究の一部、自己研鑽という名目で診療行為をしているため、大学側は雇用契約はおろか給料を払っていません。むしろ『勉強させてあげているのだからお金を払って欲しい』そういう気持ちもあるのかもしれません。

昔からこういう状態で『大学院生』が扱われてきたので誰も不満に思っていても何も言わない状況でした。

ちなみに、大学院生ともなれば既に家庭をもっている人も多いですし、なにより日々の生活費をどうやって工面するのか?という問題があります。

そこは大学院生としての研究、お手伝いとしての診療以外の時間を市中病院でアルバイトすることによってまかなっています。

だいたいアルバイトは1日で8万円くらい稼げますので、週一回アルバイトすれば32~40万円くらいの収入となり、生活はできる仕組みになっています。

医師の働き方改革の一貫でいろんなことに調査のメスが入り、旧態依然とした大学病院の医局というものが変化してきている気がします。

無給大学院生のメリット

では無給大学院生のメリットってあるのでしょうか?

実はあります。

医者の『医学博士』資格は他の博士号とは違って単なるお飾り、な面があります。

研究者と違って本気で研究をしたい訳でもなく、単に経歴に箔をつけたいがための資格です。

なので、当の大学院生の多くはなるべく楽に学位を取りたいと思っています。

そこで大学病院医局の登場です。

大学病院というものは研究機関です。他に教育、診療の場でもありますが・・・。

なのでどの大学病院の医局も研究をしています。

なので、医局内で研究しているものでいい感じに進んでいるものを大学院生に割り振ります。

そうすると、面倒な研究テーマ決定が省けますし、自分でテーマ決めしてうまく研究が進まなかった場合の無駄な時間と労力を省けます。

なので、そういう恩恵もあるので大学病院側は大学院生を無給で使っていた・・・という側面もあります。

要は『楽に学位取らしてやっからよぉ〜、タダで診療手伝ってくれるよなぁ?』という感じです。

まあ、色んなケースがあるので一概には言えませんがこういうことも裏にあります。

朝日新聞のニュースで、これからも大学院生に給料を払う気はない、と回答した大学病院はそういうことを裏でやっている可能性があるかもしれません。

なので『無給医は悪』と思っているひとも多い一方で『生活は楽だけど楽に学位を取れないなんて嫌』という人も一定数いるでしょう。

医学部の試験などと違って学位の審査はけっこう厳しいです。

かつてスタップ細胞事件で有名だった小保方晴子さんも過去を遡って博士論文が撤回され、資格剥奪となってしまいました。適当な審査をしているとそういうことが生じるのでかなり厳しく審査するようになったと聞いています。

このブログでも再三言っていますが、医師の世界のシステムは微妙なバランスで成り立っていますので、この『無給大学院生』問題に本格的にメスを入れるのならばそれが何かしらのシステムに波及し、大きな波となり変革が起きそうです。

自分は学位に興味がないので静観という感じですね。